私が住んでいる住宅街は、同時期に建てられた家が建ち並ぶ。
私、「A子ちゃんの家も外壁塗装をするって」
父親、「そのことはママには言ったらダメだよ」
父親がそう言うのは、母親が知れば、「うちも外壁塗装をしましょう」と言い出すから。
A子ちゃんの家と私の家は同じ住宅街、つまり、A子ちゃんの家と私の家は同時期に建てられた。
外壁塗装をしているのは、A子ちゃんの家だけでなく、他にもいる。
私と父親、「ただいま」
母親、「おかえり。どこに行ってたの?」
父親、「ブラブラしてただけだよ、なあ」
父親に「なあ」と言われれば、子供としては「うん」と答えるしかない。
母親、「A子ちゃんの家、キレイになってた?」
私と父親、「・・・」
母親は、A子ちゃんの家が外壁塗装をしていたのを知っていた。
母親、「キレイなお家と汚いお家、どっちが良い?」
これは二者択一ではない、汚いお家が良いわけない。
私、「キレイなお家が良い」
母親、「そうよね」
「キレイなお家が良い」と言ったら、父親は私のことを見たが、父親を裏切ったわけではない。
父親、「家がキレイになるのか、それとも、新しい服を買ってもらうのか、どっちが良い?」
私に質問されているため、答えないわけにはいかないが、母親が私のことをメッチャ見ている。
母親、「どっち?」
私、「家がキレイになるほうが良い」
母親、「そうよね」
口にはしなかったが、心で父親に侘びた。しかし、一人娘に裏切られた父親は悲しい顔をしていた。
もし、父親の質問が、「家がキレイになるのか、それとも、新しいゲームを買ってもらうのか、どっちが良い?」だったら、家がキレイになることは選ばなかった。なぜなら、服と違い、ゲームなら長く使えるから。
家の外壁塗装期間中に私の誕生日があったのだが、例年はゲームを2つプレゼントされるのだが、今年はゲームではなく参考書だけだった。