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人生の転換期

人生の転換期

長年勤めた会社を定年退職した。
転勤の多い人生だったため、暮らしたのはいずれも賃貸マンション。
賃貸マンションだと家賃を支払うだけで、面倒なことは管理会社が全て行ってくれる。
定年退職した時に住んでいたマンションは、転勤により借りただけで、住みたくて選んだわけではない。
転勤が多いと知り合っても別れなくてはならず、極力、友達は作らなかった、それは妻も同じ。
子供は独立して別に暮らしている、残りの人生を何処で住もうか?
私も妻も実家には跡取りがおり、帰る故郷はない。
いずれ老人ホームに入るつもりではいるが、それには、まだまだ時間がある。
定年退職した時に住んでいたマンションは、都市部にあり生活するには便利だが、家賃の高いのがネック。
郊外の賃貸マンションへ引っ越すために、不動産屋を回っていると、売り物件に目が止まった。
リゾート地にあるマンションが100万円を切る価格で販売されており、間取りは夫婦2人で住むには十分。
他にも良い売り物件はないか探すと、300万円を下回る一軒家が売られていた。
40年勤めた会社から得た退職金は約3000万円、退職金の1割ほどで一軒家が買えるのは、マンション暮らしが長かった私達夫婦には魅力だった。
実際に物件を見に行くと、海を望める高台に建っており、妻のほうが買うことに積極的。
妻、「300万円なら、車を買ったと思えば良いじゃない」
家の中を見せてもらうと、安いだけあり、前の住人が使っていたと思われる痕跡が残っていた。
妻、「時間があるんだから、自分たちでリフォームすれば良いじゃない。ここなら、子供たちも呼べるじゃない」
購入を後押ししたのは孫、孫は喘息持ちで空気の悪い都市部だと辛そうにしている。
リフォームに幾ら掛かるか地元の業者に見てもらうと、
業者、「200万円ほど掛ければ住めるようにはなります」
私、「傷んでいるところが多いですが直りますか?」
業者、「家が傷むのは生きているからです。薬漬けにした家は傷みませんが、そんな家は不健全で体に悪いですよ」
200万円とは別に外壁塗装もしなくてはならなかったが、塗装に使う塗料も体に負担の掛からないものを選んだ。
外壁に塗る塗料の色を決めたのは孫、孫が選んだのは黄色、黄色は妻のラッキーカラーでもある。
定年退職した高齢の私は、黄色の家?と思ったのだが、実際に塗ってもらうと悪くない。
家の周りは林になっており緑色、眼下には青色の海、その中で黄色の家は冴える、孫に言わせるとバエる。
都市部に住んでいたら、黄色の家に住もうとは思わなかっただろう。
外壁は黄色だが、家の中はマンションの時と同じ白色基調。
郊外の一軒家に住むようになってからは、訪ねて来てくれる者が多くなった。
訪ねて来る際に「目印になるものは?」と聞かれるが、黄色の家そのものが目印。

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