中古で買った一軒家の外壁を、塗り替えることにした。 塗り替えは平日に行われ、日曜日に塗り替えの進捗状況を見に行った。 塗り替えのために組まれている足場に乗ろうとすると、声を掛けて来たのは幼い女の子。 幼い女の子、「何色で塗るの?」 私、「外壁の塗り替えをしているって分かってるの?」 女の子、「そんなこと分かってるよ。うちも塗り替えをしてるから」 私、「オジさんのおうちは、白色で塗り替えをしてるの」 女の子、「うちと同じ」 私、「近所の子なの?」 女の子、「・・・、じゃあね」 私の問いには答えてはくれず、女の子は何処かへ行ってしまった。 足場で屋根に上がってみると、想像以上に屋根は傷んでいた。 中古の一軒家を買うのに、家の中は何度も確認したが、屋根の確認は雨漏りの有無をしただけ。 買って初めて登った家の屋根は、2階の部屋から見る景色とは比べものにならないほど、遠くまで見渡せる。 屋根から見られる景色の中に、防護ネットで覆われている家があり、先程の女の子の家だろうか? その家に手を降っても、私の家も防護ネットで覆われているため、私に気付くことはない。 犬を連れて近所を散策していると、犬が何かに反応をした。 耳を澄ますと、聞こえたのは「オジさーん」。 聞き覚えのある声だったのだが、周囲には誰もいない。 再び「オジさーん」と聞こえたのは、防護ネットで覆われた家の屋上から。 聞き覚えのある声がしても、防護ネットで覆われていると人の姿はない。 「オジさーん、ここだよ」、私に声を掛けてくれた女の子の家だとは思うのだが、女の子の姿は見えない。 次に聞こえたのは、空き缶の音。 おそらく、家の塗り替えで使われる塗料が入っていた缶を、女の子が叩いたのだろう。 空き缶の音が大きくなると、他の家の屋根に止まっていたカラスが一斉に飛んだ。 私、「バイバーイ」 女の子、「バイバーイ」 後日分かったことは、この女の子も中古の一軒家に住むために引っ越して来たのだ。